第24章 第二十三話 記憶<メモリア>
慌てて窓に近づいたユキサが見たのは、ティムキャンピーが飛び立った姿。
『あら?ティムキャンピーとアレンは牢に閉じ込められてるんじゃなかったかしら?』
「…。そのはず」
アレンが脱走するとは思えない。
何かあったのではないかとユキサも窓を開ける。
行くつもり?と聞いてきたメモリアに、ユキサは大きく頷いた。
『それじゃぁあたしは気づかれないようにしばらく眠るわ』
左目の色が赤に戻る。
ユキサは羽を広げて窓から飛び出し、ティムキャンピーの後を追った。
『非常事態発生、非常事態発生!本部敷地内に、ノアを確認』
『ノアを2体確認。アレン・ウォーカーと共に、東沿岸方向へ逃走の模様』
『2200時、対策会議を緊急招集。2210時、全エクソシストの無期限任務の有効化を決定』
『この事態を受け、教皇は勅命を発令。全団員に通達する』
『現時刻をもって、アレン・ウォーカーのエクソシスト権限を凍結。以降、ノアと識別する』
「そんな…!アレン!!」
「…。アレンがそんな簡単にノアと一緒にいくとは思えない…きっと何か…」
不二と彩音は走り出す。
本部の結界まで破られている状態で混乱している団員たちの中を、ひたすら走った。
そうして教団の外へ出た時、1人の枢機卿の横をすり抜ける。
『あぁ、君たちか…』
え…?と2人の足が止まった。
普通なら気にも止めない状況だというのに、何故…?
『アレンの事なら私に任せなさい。ノアやサードたちがいる。君たちは部屋へ戻りなさい』
「なにを…言って…」
枢機卿の言葉に反論しようとした彩音の言葉は続かなかった。
2人の瞳が虚ろになると、はいと短く返事を返して教団内へと戻っていった。