第24章 第二十三話 記憶<メモリア>
第零使徒の記憶を司るメモリアは、その存在が不安定だ。
元々いなかった一族の異物とも言える存在だった。
そのため、消されるとその瞬間全ての者の記憶からメモリアという存在は消える。
千年伯爵やノアたちがメモリアを知らないのは、そのせいだ。
しかしその前に肉体を破壊されてしまったネアだけは例外だった。
アレンの中へ封印されている間はメモリア消失の影響受けず、メモリアの事を憶えていた。
それがあのパリでの任務の時の反応だった。
メモリアはハートに消された後、その能力が使えると判断されたのか、ハートによって再び転生させられた。
現在の能力についてはさすがのメモリアも知らないので、自身の正体については未だ謎のままである。
『しばらくは様子を見るしか無いわね。本当はネアと話がしたいのだけど』
「それは…」
『そうね。アレン・ウォーカーの体を借りる事になるから、あんたとしては避けたいわよね』
だけど…とメモリアは少し強い声音で言葉を続けた。
『ネアのメモリーを消す事は許さないわ。そんな事しようものなら、あんたの記憶をめちゃくちゃにしてやる』
「!!」
メモリアは本気でやるだろう。
ユキサは緩く首を振った。
「あなたがそう言うなら消すことはしない。でも、私もアレンを失いたくない気持ちは一緒。だからネアを抑える程度なら、許してくれる?」
『消さないのなら構わないわ』
返ってきた言葉に、ユキサはほっと安堵した。
ふと気になってユキサが問う。
「あなたとネアって…」
『あんたが思ってるとおりよ。そういう関係だった』
パリでの事を思い出しながら聞くと、メモリアからは平然と答えが返ってきた。
そう、と呟いたユキサに、メモリアが小さくため息をつく。
どうせ神田の事を思い出しているのだろう。
『それよりあんた、ハートが何を企んでいるのかわからないんだから気をつけなさいよ。あんただけじゃなくて、あの彩音とか周助とかいう奴らも』
わざわざ彩音と不二の幼なじみと同じ名前で転生させたくらいだ。
彩音と不二にも特殊な力が備わっていることから、ハートがなにかしたのだろうと予想がつく。
分かってる、とユキサが言った時だった。
ドォン!と大きな音と衝撃が、教団内に響き渡った。