第24章 第二十三話 記憶<メモリア>
2人は絶対に神田とアルマの行方を話すことはなかった。
「どうしてこうなっちゃうんだろ…」
自分たちは世界のために戦っているのに…。
世界は一向によくならない、犠牲者は増えるばかり。
辛い、辛いよ…と彩音は不二の胸の中で泣いた。
ぽつりぽつりと降っていた雨が、本格的に降り始める。
ザァー…という音を聞きながら、ユキサは窓の外を見ていた。
神田の望みは…叶ったかな…。
あの時、神田の記憶を奪った。
その時分かった神田の自分への思い。
『あの人』と同じくらい、自分も愛おしく思ってくれていた。
窓に映ったユキサの左目が、金色に光る。
『辛いなら、あたしが記憶を消してあげるわよ?』
脳裏に響いた声に、ユキサは首を振った。
神田のこの思いは私だけのもの。
辛くても私が持っていたい。
神田に思われていた瞬間を、忘れたくはない。
「そんな事より、これからどうするつもりなの?」
『そうねぇ…正直に言うと本当にネアが死ぬとは思っていなかったから…どうしたらいいか』
うーんと悩んでる姿が、ユキサの頭に浮かんでいる。
アレンが14番目に覚醒した時、私の中でも何かが目覚めた。
しかし周りにはバレないようにと続いた言葉に、ユキサは誰にもその事を告げなかった。
ユキサの中で目覚めた者…。
第零使徒の記憶を司るノア、メモリア。
彼女はそう言った。
記憶を操れるメモリアの能力が使えるようになった事で、ユキサは全てを思い出した。
―――――全ての始まりは、ユキサが雪砂だった時から。
不二と彩音から放れていた雪砂は、殺人鬼に捕らえられた。
そうして殺される寸前、『オ迎エニアガリマシタ』と耳元で囁かれ…。
次に目を覚ました時はメモリアとして転生していた。
メモリアは14番目のネアとある計画を立てていた。
その計画については、メモリアはユキサに教えるつもりはないらしく、ユキサは知らない。
万が一ユキサが外に漏らすことのないようにとの事だった。
その計画の途中で、メモリアはハートに近づきすぎたために消されてしまった。