第24章 第二十三話 記憶<メモリア>
「何も知らず、この9年間生きてきた神田は…神田の気持ちは、どうなるんだよ!!」
「いえないよ…」
弱々しく聞こえた声に、アレンがハッと顔を上げた。
呪符の力で徐々に再生されていくアルマの体。
「ぼくが『あの人』だってわかったら…ユウはもう、探してくれない」
―――――いつか、2人で一緒に見ることができたら。
あの日の約束。
神田が『あの人』との約束に縛られてる限り、神田はずっと『あの人』のもの。
「ユウの体、どこにある…?」
ずりずりと、アルマが地面を這って神田を探す。
ユウの傍に行きたい、と神田の名を呼び続ける。
どうしても…。
「どうしても、この人だけは失いたくなかった…っ!」
アレンがそっと、アルマを抱き上げる。
神田はこっちですと小さく呟いて、歩き始めた。
優しいね…とアルマが言った時、アルマの体に異変が起こった。
「ダークマター!?」
「ありがと…」
これで、いいんだよ…。
「アルマ…!!」
「モヤシ…」
アルマの魂が徐々にダークマターにのまれ、天に上っていく中、アレンの耳に神田の声が届いた。
「モヤシ。俺たちが初めて行った任務先、憶えてるか?」
「はい!」
「あそこなら、当分見つからない…!」
そこへ方舟で送ってくれと。
神田がそう言った。
―――――マテールの町…ユキサも教団に入団して、初めて任務に行った場所。
アレンと、…神田と共に。