第22章 第二十一話 第三使徒計画
「なんだ、ズゥ爺っさまに呼ばれてきたのか」
「ツラ見せろってな。どっかの支部長じゃねぇーんだ、理由もなく来るかよ」
チッと神田が小さく舌打ちをした。
神田の言葉がグサッと心に刺さったバクに、ウォンが慌ててフォローをする。
ウォンの準備してくれた茶を口にしながら、バクが話を続けるが神田は無言のまま。
というか、隣りにいるユキサも何も口を開かないのをウォンが少し不思議そうに見ていた。
「また、はじめたんだな…」
ぽつりと呟かれた神田のその言葉に、バクがハッと神田を見た。
「今度は半AKUMAにしてAKUMAを食わせんだって?すげぇ発想」
青ざめたバクが、ガタリと立ち上がった。
やはり…キミを傷つけてしまったかと神田へ近寄る。
は?と目を丸くした神田がバクを見ると、バクが矢継ぎ早に言葉を続けた。
「いや、傷ついて当然だ…!すまん神田!キミにした誓いを我々は守れなかった!」
「ちょ…っ」
ガシッと神田の肩を強く掴み、殴れ!とバクが叫ぶ。
こちらの話も聞かないバクを神田は傷ついてねぇよ!と殴った。
吹っ飛んだバクを見下ろしながら、神田が仁王立ちをする。
「勝手な妄想はやめろ。謝る必要なんざねーよ。教団がどうなろうが俺にはどうだっていいことだ」
「…。キミがそうでも、我々にとってキミは…そうではない」
9年前、中央庁が圧した人造使徒計画でキミを造り出したのは、バクの一族、そして北米支部長レニーの一族だ。
ずっと、ずっと悔やんでいる。
バクはあの時何も出来なかった。
そして今も、何も出来ずにまた第三エクソシスト計画などと。
ハッと気づいてバクが慌てたようにユキサを見た。
ついうっかり彼女の前でベラベラと喋ってしまった事に、バクが慌てる。
事の成り行きを黙って見ていたユキサがバクと目が合うと、口を開いた。
「全部知っています」
「え…?」
驚きに目を見開いたバクから、ユキサはフイッと視線をそらした。
神田も何も言わない事から、ユキサが知っているという事は分かっていたのだろうとウォンは思っていた。
ユキサはじっ…と床を見る。
そこには一面に咲き誇る蓮華―――。
そんなユキサを神田が見ていた事は、ユキサは気づかなかった。