第22章 第二十一話 第三使徒計画
「私と一本だけでいいから組んでくれない?」
「は…?」
「「ユキサ!?」」
ユキサの言葉に周囲が凍りついた。
あれ?と首を傾げたユキサがだめなのかと神田へ聞く。
神田は口籠らせながら、いや…と言ったが表情が冴えない。
「ユキサ、男と女だと差が出てしまうよ」
「そうだよ!怪我するよ~…」
「いや、神田なら絶対加減するだろうが…」
「けど女に負けるなんてことできねぇだろ」
「となるとユキサを負かすのか?」
「なんか面白くなってきたな」
不二と彩音が心配するよそで、周囲がひそひそと話していた。
全部聞こえているが。
テメェら…と睨みを利かせている神田に、それじゃぁ…とユキサが言葉を続ける。
「アーリだけ使ってもいい?飛ぶのは無しで」
ふわりと手足に羽を出現させる。
どうやら何を言われてもやめる気のないユキサに、神田はため息をついた。
「分かった。勝敗はどう決める?」
「なら、相手の髪紐取れた方が勝ちで」
「髪紐?」
今、ユキサと神田はいつも通り長い髪を1つに結っている。
ただしユキサは真ん中より左側に結っているので、どちらかというと不利だ。
神田の視線に気づいて、ユキサが小さく笑った。
「気にしなくて大丈夫。むしろ守備範囲が左寄りだから逆にやりやすいよ」
じゃぁ、お願いしますとユキサが言って、2人が構えた。
「無謀だよ~…神田に勝てるわけないのに…」
「そうだね。…普通に考えれば、だけど」
え?と不二に問い返した時、ユキサと神田が同時に地を蹴った。
素早い動きで互いに打ち合っている姿に、彩音が呆然とする。
神田の方が明らかに力が上なはずなのに、どうしてユキサは打ち合う事が出来ている?
「か、神田が手加減をしてるんだよね?」
「うーん…確かに多少はあるとは思うけど、余裕はなさそうだよ」