第3章 第二話 マテールの亡霊
「まんまと騙されたナ、エクソシスト!!」
「ぐ、うあああああ!!!」
笑いながら、AKUMAがアレンの爪で神田の体を切り裂いた。
死んだ!死んだ!と喜ぶAKUMAだったが、神田がボソリと何かを呟く。
「死ねねぇんだよ…あの人を見つけるまでは…」
「あああああ!!」
叫び声と共に、ガッとAKUMAはアレンに掴まれ、壁へと叩きつけられた。
その隙にユキサが六幻を持って神田へと駆け寄る。
癒やしの術を施そうとしたが、ドクン、と心臓が鳴った。
「くっ…」
不安定の状態で使ったイノセンスのせいか、上手く発動が出来ない。
再び響いたアレンと怒号と衝撃音に振り返れば、アレンがAKUMAを遠くへ飛ばした所だった。
「アレ、ン…」
「ユキサ!神田の様子は…」
駆け寄ってきたアレンへ、ユキサは六幻を手渡す。
ーーーーーこれを持って、2人を連れて逃げて。
続いた言葉に察したアレンは、大きく首を振った。
「1人でなんて無茶です!」
「私じゃ、2人を抱えていけない、から…」
AKUMAを足止めする。
その間に、隠れて体制を立て直してと。
遠くから、AKUMAの声が聞こえてきた。
ギリ、と唇を噛んだアレンは、神田を肩に支えながら立ち上がった。
「2人を安全な場所に運んだら、すぐに戻ります…!」
大丈夫、と小さく呟いたユキサに背を向け、アレンは足を進めた。
それを見届けたユキサは大鎌と足に羽を発動する。
ズキリと傷んだ心臓には気付かない振りをした。
ーーーーーこんなところで、死ぬつもりはない。
2人が体制を立て直す時間、それさえ稼げれば…!
にたりと笑ったAKUMAの顔が見えた時、ユキサは大きく飛んだ。
「まだ、地上では戦いが続いてるのかしら…」
地下の広間にて、ララが帽子を取った。
その様子を不二が驚いたように見る。
どうして自分が人形だなんて言ったの?と咳き込むグゾルに聞くララを見て、そういう事かと不二は納得した。
「彩音は知っていたの?」
「そうなんじゃないかな、とは思ってた。私はララの姿、見た事あったから…」
咳が酷くなるグゾルを見ながら、彩音は悲しげに呟いた。
咳き込みながら血を吐くグゾルは、もう時間がないのだろう。
眠りたい、というグゾルに膝を貸し、ララは静かに歌い出した。