第21章 第二十話 14番目
「大丈夫…ッ!」
硬化した体は元に戻ったものの、まだ大きく動かすと軋む体に彩音が顔を顰める。
彩音に手を貸そうと腕に触れた時、不二の動きがぴたりと止まった。
それから忙しなく彩音の頬や額に触れる。
「周助…?」
「彩音、すごい熱だ!」
ぐい、と抱き上げられる。
そういえばなんか頭がボーっとするような…。
遠くから子供たちの泣き声も聞こえて、ダークマターの影響だと誰かが言った。
「ねぇ…周助…」
「ん?」
「アレンって…」
彩音の言わんとしている事は分かる。
2人とも、先程ばっちり見てしまったのだから。
だけどユキサは神田の事が好きで…。
不二は神田の想い人の事は知らないが、彩音の頭の中では、アレン→ユキサ→神田の図が出来上がっていた。
「でも、今までアレンはユキサに恋愛感情を向けているようには見えなかったけどね」
近くにはほとんど神田もいるし、と不二は言う。
ならばさっきのm凄く優しい眼差しを向けてユキサにした行為は一体何だったのだろう。
「…神田、大丈夫かな」
「事の真相が分からない限りはずっと機嫌悪そうだよね」
これでアレンとの仲は更に悪くなるだろう。
彩音と不二は小さくため息をついたのだった。
孤児院の入口前の階段で、どんよりとした空気が流れる。
簡単に怪我の治療したアレンたちが座って休んでおり、その中央にガルマーが項垂れながら座っていた。
今回の事件が、本当に怪盗Gが体をのっとった事件だった事、そしてそれに関わっていたのがティモシーだった事、AKUMAという化物がいる事など。
色々な事が重なってガルマーはいっぱいいっぱいだった。
神田は自分の腿を枕に寝かせている、未だ目を覚まさないユキサを見ていた。
纏っている空気は最悪で、かなり機嫌が悪い。
額に冷却シートを貼りながら不二に寄りかかっていた彩音は、この空気に居心地が悪かった。
ふいに、ぽつりぽつりとガルマーが話し始めた。
「ティモシーの父親を逮捕した時な、俺は子供が一緒にいるのを知ってて突入したんだ」