第21章 第二十話 14番目
「え?」
アレンにもギリギリ聞こえる程度の大きさの声に、どういう意味と聞く前にルベリエがゴホンと咳払いをした。
ルベリエがいた事にたった今気づいたユキサが、慌ててアレンから離れ、ルベリエから逃げるようにして神田の傍へ駆けていく。
よく見れば周りには元帥を含めてエクソシストたちが全員揃っている。
ルベリエが口を開いた。
「アレン・ウォーカーは、14番目というノアのメモリーを持った宿主であることが判明しました。ですが、今後も表向きは、彼には教団本部に在籍し、エクソシストの役務を続行してもらいます。今は彼の奏者の能力が、教団にとって必要であり、これ以上の戦力の減少も痛手である。故に、中央庁はノアをしばらく飼う決断に至りました」
飼うという言葉に、ユキサが嫌悪感を露わにする。
ルベリエの言葉に、本当なの?とリナリーがコムイに視線を向けた。
「ただいまをもって、エクソシストに無期限の任務を言い渡します。もし、アレン・ウォーカーが14番目に覚醒し、我々を脅かす存在と判断が下されたら」
「その時は、僕を殺して下さい」
コムイの言葉は、アレンが続けた。
リナリーがハッとしてアレンを見る。
「でも、そんな事にはならない。14番目が教団を襲うなら、…僕が止めてみせる」
「アレン」
アレンを呼んだユキサに、視線が集まった。
ユキサは真っ直ぐとアレンを見ている。
「もしアレンが14番目に負けてしまう事があっても、私が止める。私にはそれができるから」
「おいっ…!」
何をしようとしているのか気づいた神田が咎めるようにユキサの腕を掴む。
ユキサがその手を握って、大丈夫だと言った。
何度も聞いた『大丈夫』という言葉は、今まで大丈夫だった試しがない。
いつもユキサはギリギリを生きている。
「だからアレン、安心していいよ。私もアレンを支えるから」
―――――1人じゃないよ。
1人は嫌だと言ったお前が、それをアレンに言うのか。
神田が俯いて、小さく舌打ちをした。