第21章 第二十話 14番目
「うっ…科学班からもらった薬のお陰で、まだマシだよ…」
え、科学班の…?
一瞬驚いたような表情をした彩音だが、ちゃんとした薬だよと不二が小さく笑った。
しかし不二の顔色はよくないままだ。
そんな不二を見ながら、ゆっくり休んでねとユキサは室内から出る。
そのままユキサは、甲板に出ているアレンの元へ歩いていった。
「アレン、風邪引いちゃうよ?」
寒くなってきた季節に、曇っている天候。
帽子を被ってぼーーーっと先を見つめるアレンに近づいて、どうしたの?とユキサが問いかけた。
振り返ったアレンが、新本部がどんなところか気になって…と呟く。
引っ越し作業に、教団の壊滅しかけたあの事件に。
かなり時間がかかってしまったが、やっと新本部に行く事が出来るのだ。
「上層部や科学班は一足先に行ってるんでしたよね?」
「うん、前よりも広くなって、とっても快適だって言ってたよ」
じゃぁ食堂も広くなってるかな~?
嬉しそうに言ったアレンを見て、ユキサも笑う。
そうしてふと前方を見て、ユキサが新本部だと呟いた。
「ここが新しい本部かぁ…」
新本部に入るなり、天井を見上げて彩音が言った。
まだ引っ越したばかりのため、本部内は荷物整理に追われている。
広いねとユキサが言っていると、近くで片付けをしていたジョニーが駆け寄ってきた。
「いらっしゃい!じゃなくて…おかえり~!」
「ジョニー!凄いねここ、豪邸みたい」
「立派すぎてなんだか気が引けますね」
アレンの言葉に、神田がケッと鬱陶しそうに顔をそらす。
「場所が変わったくらいで、浮ついてんじゃねェ」
「浮ついちゃいけませんか?」
「あぁ?うるせェだろーが。人の迷惑も考えろ」
「誰が、誰に迷惑をかけてるっていうんですかね」
バチバチとアレンと神田が睨み合う。
よく見れば神田のゴーレムとティムキャンピーも睨み合っており、ユキサとスノーベルがまあまあと止めに入った。
不満そうにだが一応落ち着いた2人。
そこへ奥から1人の男が歩いてきた。