第21章 第二十話 14番目
「AKUMAたちも元は人間。慈悲の気持ちを抱いてはいけませんか?」
くだらねぇ、と言って神田はリンクの元へ歩いていった。
ふわりとアレンの傍に降り立ったユキサが、アレンの肩に手を乗せる。
「! ユキサ…」
「アレンはそのままでいいんだよ。…神田には、神田の思いがあるから」
ね?と言ったユキサに、アレンはありがとうと小さくお礼を言った。
「チェックメイト」
リンクの声が響き、やったね!と彩音が不二に手を合わせる。
監視役の私が何故こんな事を…と文句を言ったリンクだったが、リンク以外の全員はことごとく負けてしまったのだ。
ユキサや神田、彩音に至ってはチェスのルールさえ知らない。
「我々の勝ちです、Mr,マーチン」
指輪を頂きますとリンクは言った。
とんだチャンピオンだ、死んでまで迷惑かけんじゃないよバカ弟が!
老婆がそう言うと、びくりと手が動く。
ずっと勝ち続けて、まだチェスを続けたくて。
けれど今日、マーチンは負けた。
「いい勝負だったじゃないか。もう、ここいらでいいだろう?」
マーチンの手が振るえて、やがて動かなくなる。
さらりと砂になった手からころんと指輪が転がった。
ユキサがそれを手にとって体へ吸収する。
神田がゴーレムに声をかける。
「イノセンスを回収した」
『了解。新本部へ帰還せよとの命令です』
了解と神田が返事を返した。
「それじゃぁおばあさん、さようなら!」
「ありがとうね、あんたたち。…怪我するんじゃないよ」
こんな若い子たちがあんな化け物と戦っている。
複雑そうな表情をしながら言う老婆に、彩音ははいと笑顔で返事を返した。
「大丈夫?周助…」
揺れるボートの室内で、彩音が心配そうに不二に言った。
新本部への道は海から回り込まなくてはならず、船酔いが酷い不二にとっては辛いものだった。