第21章 第二十話 14番目
ぼそりと言われた神田の言葉にユキサがえ?と首を傾げた。
ちらりと見てる神田の視線を追って、理解する。
「ちゃんとはいてるよ、ほら」
「見せなくていい!!」
「ふふ…彩音は少し長めのスカートなんだね?」
「うん、やっぱりあまり肌を出すのは好きじゃなくて…」
彩音の団服もリナリーと同じようなデザインだが、スカートが2段になって長めのもの。
似合ってるよと不二がにっこり微笑んだ。
4人にとってはいつも通りのやりとり。
今日で最後になるこの食堂での光景。
「(新しい本部でも、こうして4人で楽しく過ごせますように)」
ユキサは心の中で強く願った。
そんな4人の様子を見ながら、周囲がひそひそと話し合っていた。
見慣れた光景だったはずだが、数日前からなんだか4人の様子が変わっている気がする。
「ねぇ…小鳥遊さんと不二さん、前からラブラブだったけど今はもっとラブラブな感じしない?」
「分かる!なんだろう、2人の纏う空気が今まで以上にピンク色というか…」
「ピンク色というよりもう真っ赤だよね。薔薇が見えるというか…」
「あの神田が…とはずっと思っていたけど、最近さらにユキサと距離が近くないか?」
「一緒にいる時間が長くなったよな…ユキサに用があってもなかなか声かけられないと言ってる奴らがほとんどだぜ…」
「あれでまだ付き合ってないらしいからな。どう見ても両思いだろ?」
話しながら、各々が羨ましいと4人を見ていた。
元々ユキサ、彩音、不二の3人は教団内でもかなり好意を持った人間が多かったが、最近ではユキサのおかげかほんの少しだけ物腰が柔らかくなった神田にも好意を持つ人間が出てきている。
そんな人気者の4人は他人の気持ちなどいざしらず、既に4人の世界が出来上がっているのだ。
迂闊に近づけない、いや近づこうものなら神田と不二に殺される。
つい先日、教団内での大きな事件が起きてから、一体何があったんだ!?と周囲は気になって仕方がなかった。
もちろん、それを聞くことは無謀な選択なので誰も聞くことはなかったが。
場所はロンドン。
ドンッ!と大きな音と共に、AKUMAが拳を振り下ろした。
拳の先には墓の前で亡霊とチェスをしているリンクの姿がある。