第1章 プロローグ 導かれし三人
ご無事ですか!?と駆け寄るナギサを見ながら、神田は六幻に触れていたが、少女の呟きにバッと少女へ視線を向けた。
当たり前だが、辺りを見てもこの一面真っ白な世界に、花など見当たらない。
ナギサに声をかけられた少女はきょとんとしながらも大丈夫だと答えている。
「我々は黒の教団。こちらはエクソシストの神田ユウ様、私はナギサと申します。この辺りでのAKUMAの活動について、調査に参りました。お聞きしたい事もございますので、よろしいですか?」
「AKUMA…」
ナギサの言葉に少女は、先程の化け物がAKUMAなのだと瞬時に理解した。
「分かりました。長くなりそうですし、家に案内します」
先程の戦闘で落としたのであろう荷物を拾いながら、少女は村へ歩き出した。
「すみません散らかっていて。今火をつけますので適当に座って下さい」
少女が2人に声をかけながら、暖炉へと近づく。
ナギサはリビングチェアに座ったが、神田は立ったまま扉の横の壁に寄りかかった。
少女がリュックからマッチを取り出したが、先程の戦闘でリュックが地面に落ちて、濡れて使えなくなっている事に気づき、小さくため息を付いた。
見かねたナギサがマッチを取り出そうとしたが、その前に少女が小さく何かを呟き、ボッと火がつく。
その様子をナギサは少し驚きながら、神田は黙って見ていた。
「私はユキサといいます。町で、この村の事は聞いてますよね?」
ナギサの向かいのリビングチェアに脱いだ上着をかけて座ったユキサは、はっきりとそう言った。
「何故それを…」
「私に食料や生活品を届けてくれる方が、あなたのような姿の人が町で聞き込みをしていると言ってましたので」
なるほど、とナギサは納得した。
少女の名はユキサ。
身長は低く全体的に細い、まだ1人で生きていくには大変な年頃だろうとナギサは思った。
しかしそんな外見とは裏腹に、内面はかなりしっかりしている。
ユキサは自分が狙われている事を知っている。
町を巻き込まないよう、食料や生活品は届けてもらいながら、1人でここに住んでいるのだ。