第1章 プロローグ 導かれし三人
『とある場所に、AKUMAに滅ぼされた村がある。村から逃げてきた人の話によれば、2ヶ月前、村が滅ぼされたにも関わらず、AKUMAはその後もその周辺で見かけるらしい。1ヶ月ほど、町で様子を見ていたファインダーの報告で、日に日に数も増えて活動が活発になっているとの事だ。イノセンスがある可能性は高いが、2ヶ月以上もAKUMAに奪われず残っているものだろうか…調査に行ってほしいんだ』
コムイに頼まれて調査をしに来た神田。
町で例の村から逃げてきた人に詳しく話を聞き、神田とナギサは雪原の奥の森の更に奥、AKUMAに滅ぼされたという村へやってきていた。
そこで壊れていない一軒の小屋へ向かっていたところだったのだが。
「チッ…行き違いか…」
大きな音の方へ向かいながら、神田は小さく舌打ちをする。
町で聞いた話、それは1人の少女の事だった。
森の中で倒れていた少女を村で匿ってから数年は何もなかったが、少女の不思議な力が覚醒すると同時に、AKUMAが現れ始めた。
少女はその不思議な力でAKUMAを退治していたが、自分だけが狙われているのが分かり、村の人々を町へ逃し、それからは離れたこの村で1人でAKUMAと戦い続けている。
町に逃げた住人たちは、助けたくても助けられないと、最後は神田に少女を救ってほしいと頼んできた。
「神田様!見えて参りました!」
「下がっていろ!!六幻、抜刀…」
前方に見えるAKUMAに向かって、神田はスラリ、と刀を抜く。
「災厄招来…界蟲『一幻』!!!」
叫びと同時に、刀から無数の蟲がAKUMAへ向けて飛ばされた。
だが蟲がAKUMAを襲う前にAKUMAが真っ二つに斬られ、奥から少女が飛び出す。
神田の繰り出した技はそのまま少女へと突っ込んでいった。
「なっ…!六幻、戻れ…っ!」
「あ、危ない…!!!」
神田の制止が先か、ナギサの声と同時に、無数の蟲はフッ…と少女の前で消え去った。
蟲を止めようと手をかざしていた少女の目が、神田とナギサの姿を捉える。
「(…?六幻が間に合ったのか…?それとも…)」
「…お花…?」
「!?」