第20章 第十九話 黒の教団壊滅事件再び!?
「な、な、なん…!」
「テメェもさんざん触っただろ」
あの事件の時、小さい神田を散々抱きしめたり頬擦りしたり。
思い出してユキサの頬がうっすらと赤く染まる。
「あ、あれは…神田がかわいかったから…」
「なら俺も触っていいって事だな」
え…とユキサが呟いた時、神田の手が猫耳に触れた。
ぴくりと反応を示し、くすぐったい…と小さく震える。
くすぐったさからか、それとも恥ずかしさからか…少しだけ涙を浮かべて震えるユキサを見ながら、神田は目を細めた。
ユキサは知らない。スキンとの戦いの後のあの事を。
1人で逝こうとしたユキサの手を取った時の、神田の思いを。
ある場所を見て、神田は耳に触れていた手をぴたりと動きを止めた。
ユキサがアレンに噛まれた痕が残る場所。
「…ユキサ」
「な、なに…キャッ!?」
呼ばれて振り向くと、思ったより近かった神田に驚いてバランスを崩す。
そのままベッドに倒れ込んだユキサに、神田が覆いかぶさった。
倒れる際に引っ張ってしまった神田の髪紐が解け、さらりと黒い長い髪が頬にかかる。
「か、んだ…?」
「俺は…俺の命が尽きるまで、お前の傍にいる」
だから俺だけを見ていろ、俺の傍にいろ。
神田の言葉に、ユキサが大きく目を見開いた。
強い視線を受けて、バツが悪そうにユキサが顔を逸らす。
「確かに俺は『あの人』を探してる。…それは今も変わらない。だけど俺はお前を」
言葉を遮るように、ユキサの手が神田の口を塞いだ。
それ以上は言わないで、もう十分だから。
自分を大切にしてくれているのを知っている。
けれど神田の想っている人は『あの人』で。
神田が口からユキサの手を退かせる。
そのままベッドに押し付けて、噛み痕が残る場所へそっと唇を寄せた。
「っ…かんだ…」
「もういい」
なにがもういいなのだろう…。
一度顔を上げた神田の唇が再び下りてくるのを見ながら、ユキサは瞳を閉じた。
あぁ、なんて優しいキスなんだろう…と心の中で泣いた。