第3章 第二話　マテールの亡霊

ゆっくりと、AKUMAの方へ視線を向ける。
AKUMAは…その形状を変えようとしている所だった。
AKUMAに宿っている魂が見えるアレンは、その様子に目を見張った。

「なんだ…？」

アレンが呟いたその時。

"ワタシハ…アクマ…”

不気味な声が、辺りに響いた。

"ワタシハアクマ。ダークマターうまれた自我。育んでくれてアリガトウ”

フハハハハ！！レベルアップだ！！と不気味に笑うAKUMA。
アレンはユキサをその場に寝かせ、立ち上がった。
とそこへ、ララとグゾルを抱えた神田とトマ、不二、彩音が横切る。

「神田…」
「助けないぜ。感情で勝手に動いたお前が悪いんだ」

一人で何とかしろ、と言う神田にアレンも反論はなかった。
イノセンスが君の元にあるなら安心です、と答えるアレンの後ろ、気を失っているユキサを、神田はチラリと見る。

「トマ。アイツを見張ってろ」
「ウォーカー殿ですか？」

違う、AKUMAだ。
その言葉に承知しました、とトマはその場を離れる。
再び駆け出した神田を、彩音と不二も黙って追った。

(アイツは…勝てない。アレには決して…)


「………？」

ふ、と意識が覚醒する。
どこかの建物で目を覚ましたユキサはそっと周りを伺った。
気づいたトマが大丈夫ですかと声をかける。
こくりと頷くと、ユキサは未だふらつく頭を覚醒させるように小さく左右に振った。
アレンと神田さんは？と口を動かすと、トマはゆっくり一方を指差した。

「神田殿はマテールの亡霊と他３名と共に安全な場所へ移動してます。ウォーカー殿はレベル２のAKUMAと、交戦中です」

レベル２！？
目を見開いたユキサが慌てたように立ち上がるが、すぐに目眩がしてその場に座り込んだ。
体が重い、思うように動かない。
その体では無理です、とトマが駆け寄ってきた。
それでも体を引きずりながら、建物の外を見る。

ハッとしたユキサはトマの制止を振り切り、建物の外へ出た。

(イノセンス、発動…！！)

同時に、大鎌をAKUMAへと振り下ろした。
目の前には…アレンが２人。
アレンが、アレンに胸を裂かれていた。