第19章 第十八話 本部襲撃
「アレンくん!」
地面に倒れたアレンに向かって叫ぶリナリーの肩に、ユキサが手を置いた。
ここは私に任せてと言霊を唱える。
「大丈夫なの…!?ユキサもひどい怪我を…」
「…そんなことよりリナリー。リナリーは上へ…」
え…?と呟いたリナリーの後ろから、彩音と不二も歩いてきた。
「リナリー…。タップが、」
彩音の言葉にリナリーが駆け出した。
守化縷にされた団員は…きっともう…。
ぐっと唇を噛んだ彩音の肩を不二がそっと抱き寄せる。
アレンの傷が深い。
もともと重症を負っていた動かない体を、イノセンスで無理に動かしていた。
何度もヒールと唱えてたユキサもくらりと目眩がして頭に手を当てる。
彩音が慌ててユキサを呼ぶと、アレンも力なく言葉を漏らした。
「…もう、大丈夫ですから…ありがとうございます…」
「でも…」
再び言霊を唱えようとした所で、ユキサは手を誰かに掴まれた。
ふわりと揺れた黒髪に、神田と小さく呼んで振り返る。
「歩けるか?…モヤシは俺が運ぶ」
「アレンです、バ神田…」
神田の言葉にユキサが頷き、いつもよりトゲのないアレンの言葉を聞きながら、神田がアレンを背負った。
そうして5人はその場を後にする。
―――――長い朝は、終わった。
ルル=ベルによる本部襲撃の後すぐ、中央庁と教団の幹部が召集され、今後の体制について連日評議が行われた。
科学班は約半数の研究員を失い、その他の班も含めその被害は大きく…。
本部はしばらく機能を失ったように静かだった。
「あ、いたいた」
「ジョニー!」
ガキーン!という大きな音がする方へ向かうと、そこにいたのは木刀を持つアレンと神田。
そしてそれを見ているユキサ、彩音、不二と、ラビやブックマン、マリ、チャオジーの姿があった。
車椅子でやってきたジョニーに不二が振り返る。
「珍しいね、あのふたりが組んでるなんて…」
言いながらジョニーがアレンと神田を見た。