第19章 第十八話 本部襲撃
「ごめんね…もっと早く気づいてあげられていたら…」
「いえ…長官の指示でしたし…」
どうしようもなかったと思いますとユキサが言う。
ユキサはコムイに色々と調べられ、点滴を打たれてベッドへ寝かされていた。
「幸い、ユキサちゃんの治癒能力のおかげで体は良くなっていると思う。ただ…」
飲んだ薬の効果が悪く、長引きそうだとコムイは言った。
神田が何を飲んだのか聞くと、イノセンスの発動を制御するものらしいとユキサが答える。
それを聞いた神田が大きく目を見開いた。
「なっ…エクソシストに飲ますもんじゃねぇだろ!」
お前も素直に飲むんじゃねぇ!と怒られ、ユキサは困ったように笑った。
薬がどんなものか聞いてなかったのもあるが、どうせ断る事はできなかったのだからと。
舌打ちをして神田の表情が忌々しげに歪む。
「僕から長官に話しておくよ。今はAKUMAの卵の事もあって警戒も必要だ。それを理由に、これ以上の検査はやめてほしいとかけあってみる」
「すみません、ありがとうございます」
申し訳無さそうに言うユキサに、コムイは首を振って小さくごめんねと謝って部屋を出ていった。
残された神田はその場に居座る気のようで、ベッド横に椅子をつけて座る。
鍛錬は?と聞くユキサに、神田は今はいいと素っ気なく答えた。
「ごめん…心配かけて」
「いい。……とは言い切れねぇが、どうしようもなかったんだろ」
彩音と不二を引き出されれば、ユキサが断れないのは分かっている。
だからこそそんな手段を用いたルベリエに、神田は激しい怒りを覚えた。
体を起こしていたユキサをゆっくりベッドへと押し付けた。
「休め。ここにいるから」
「ありがとう。神田、手を握ってていい?」
返事の代わりに神田がユキサの手を握る。
もう一度小さくお礼を言って微笑んだユキサは、目を閉じた。
「アレン!」
食堂へ入るとテーブルの上に大量の皿が置かれているのが目に入り、彩音がアレンを呼んだ。
不二と共に歩いてくる彩音を見て、アレンがおはようございますと笑いかける。
アレンの隣で食事をしている監視役のリンクに、不二が視線を向けた。
「君が噂の…」
「ハワード・リンクです、不二周助」