第18章 第十七話 帰郷
「ふむ…前と変わらず、シンクロ率が見えないな」
とりあえず六幻と鉄槌はコムイに渡すようにとヘブラスカが言った。
素直に頷いて、コムイに壊れた六幻と鉄槌を渡す。
「次にリナリーのイノセンスを預かろう」
はい、とユキサがリナリーのイノセンスを取り出し、ヘブラスカへと預けた。
ヘブラスカがユキサの体を調べるが、特に問題はないようだ。
「あとは…イノセンスが壊されたときに起こるという現象だな…」
「はい。それについては彩音も…」
彩音がコクリと頷く。
体が光りだすのはユキサだけだが、苦しくなるのは2人ともだった。
詳しく説明をしていると、大元帥が口を開く。
「ヘブラスカよ、その者のどちらがハートの可能性は?」
「…今はまだわからない。だが気をつけておいたほうがいいだろう」
その点では不二も、とヘブラスカが続けた。
不二も江戸での戦いで体に異常が起きている。
アレンといい、リナリーといい、ユキサ、彩音、不二といい…。
「イノセンスが、これまでにはない現象を起こしている…何か意思のようなものを感じるのだ」
悲しみの力を糧にAKUMAが進化するように、イノセンスも適合者の強い意志に反応して…まるで。
「イノセンスも、進化しているのか…?」
「かもしれん」
だが強い力は、その代価も大きくなる、寄生型のように。
ハッと彩音と不二がユキサを見た。
寄生型は、装備型と違ってイノセンスの強い影響を受ける。
寄生型が希少だと言われる理由は、そのせいで体の寿命が早く訪れるからだとヘブラスカは言った。
「そんな…!じゃぁユキサたちは…」
「…リナリーのこのイノセンスも、寄生型になる可能性もある。…コムイ、次にシンクロする時は覚悟をしておいた方がいい」
リナリーに伝えておいてくれと言ったヘブラスカに、コムイは唇を噛んで俯いていた。
「時間を取らせてしまって悪かったね。4人とも、まだ無理せずゆっくり休むんだよ」
「コムイさん…」
仕事に戻るよ、と背を向けたコムイに、彩音は声をかけることが出来なかった。
リナリーも、もしかしたら寄生型に…?
それにユキサやアレンたちは…。