第18章 第十七話 帰郷
アレンたちが方舟に飛ばされ、ティエドールたちと江戸に残って戦っていたクロウリー。
前線で戦うのにだいぶ無茶をしたらしく、長い昏睡状態にあった。
「私は聴覚が良い分キツイ…」
「大丈夫かい?マリ…」
不二の言葉にマリは顔色が悪いまま小さく頷いた。
パサ…と音がして振り向けば、神田が上着を羽織っている。
「あれ?神田、どこか行くのかい?」
「こんなところで寝られるか!自室に戻る」
でもまだ医務室から出る許可は…と言った不二に知るかと部屋を出ていこうとする。
しかしそれは医務室に来たティエドールによって行く手を塞がれた。
手には花が抱えられている。
「周くんの言うことを聞きなさい、ユーくん」
周くん?と不二が首を傾げていると、神田が思い切り眉間のシワを寄せる。
「…どいて下さい」
「可愛い息子たちのお見舞いに来たんだよ。ベッドに戻りなさい、ユーくん」
「息子じゃねェし教団に戻った途端その呼び方になるのやめて下さい」
「弟子は我が子も同然じゃないか。照れないで家にいる時くらいは私に甘えておいで」
あ、周くんたちも弟子じゃないけど我が子同然に思ってるからね!とティエドールに視線を向けられて、不二は少し困ったようにはいと返事をした。
諦めろとマリに言われた神田は、堪忍袋の尾が切れた。
その時、医務室のドアが開く。
「失礼しまーー」
「俺は…っあんたのそういう所が大っっっっ嫌いだーーーー!!!!」
ドンガラガッシャーーーーン!!
騒がしい医務室に、ドアを開けたユキサと彩音がぽかんと立ち尽くした。
神田が乱心なんて珍しいなとユキサが見ていると、不二が2人に気づいて近づいてくる。
「やぁ彩音。ユキサももう大丈夫なのかい?」
「あ、うん」
「あのね周助。私たちヘブラスカに呼ばれているみたいで…」
今から行ける?と聞く彩音に、不二は大丈夫と頷いた。
騒いでいた神田が、ぴたりと動きを止めた。
ユキサたちの体質の事で、大元帥やヘブラスカの所へ行くのだろう。
3人の体は特殊だ。
眉を顰める神田を見て、ティエドールが口を開く。
「そういえば六幻はユキサちゃんが持ったままだったね。ユーくんも体が大丈夫なら行ってきたらどうかな?」