第18章 第十七話 帰郷
「おかえり!!!」
方舟から降りると、そこには教団員たちが集まっていた。
笑顔で迎えてくれる団員たちに、なんかこういうのいいねと彩音が不二に囁き、不二はうんと頷いた。
団員たちの真ん中には、コムイが両手を広げて満面の笑みを浮かべている。
兄さん…とリナリーが呟き、アレンとラビがそっとリナリーの肩を押した。
振り返ったリナリーに、全員が優しく頷く。
リナリーが駆け出した。
優しくリナリーを抱き止めて、コムイがおかえりと言った。
「ただいま…!!」
わぁ……!!と周囲から歓声が上がった。
それから歓声が落ち着いてきた頃、リナリーがミランダへと声をかける。
ミランダが何かを堪えるように俯いた。
ミランダは江戸での戦いの最中、タイムレコードを発動していた。
方舟内にいたアレンたちは、戦いが終わった後にユキサが治療を施していたため、傷は癒えていた。
しかしそれは方舟内での戦いのみ。
その前のクロス部隊や、アレンたちが方舟へ飛ばされた後のクロウリーやマリたちの吸収した分は、ミランダが持ったままだった。
アレンたちが方舟へ飛ばされる前、治療は自分がやるからとユキサに発動を解くように言われたが、いつ戦いになるかも分からない状況でユキサに負担をかけたくなくてミランダは断った。
結局最後には発動を解いて吸収した分を返さなくてはならないのだが…。
「さ!思いっきりやってくれさ~!」
最初から覚悟をしていたことだから大丈夫。
笑顔で言うラビたちを見ながら、彩音はユキサが目を覚まして無くてよかったと思った。
おそらくミランダが発動を解いた後、無理をしてでも癒やしの言霊を使うだろう。
ちらりと神田に抱かれているユキサを見ながら、彩音は小さく息を吐いた。
涙を流しながら、ミランダが刻盤<タイム・レコード>の発動を停止する。
倒れたラビたちに、彩音や不二が駆け寄って手を貸した。
そうして医療班たちの手によって、運ばれていく。
ラビたちの怪我は酷い、でももう大丈夫だ。
ユキサによって軽傷で済んではいるが、念のため神田、ユキサ、彩音、不二も病棟で入院することとなった。