第18章 第十七話 帰郷
「ユキサ、ここ最近色んな事が起きていて…何か知っているなら教えてほしいんです…!」
「そいつに聞け。で、そいつが覚えてねェなら今は諦めろ。…いずれ分かることだ」
いずれ…ぽつりと呟いて、彩音は小さくはいと返事を返した。
「今事情を知らないでもユキサの身に危険が及ばないなら、それでいいですが」
「周助!?」
聞こえてきた声に彩音と神田がそちらに視線を向ける。
大丈夫!?と駆け寄ってきた彩音に、不二は大丈夫だと微笑んだ。
そしてクロスを見る。
「もしもユキサの身に危険が及ぶのであれば、教えて頂きたいです」
「却下だ」
なぜ、と不二が強く問う。
そいつが知らないのであれば、それがそいつの計画だ。
オレからすべて話す訳にはいかない、そいつの計画が狂う。
だからお前達も無理に聞こうとするな、と。
クロスの言葉に、不二は唇を噛む。
知れたら、何か変わるかもしれないのに…。
「どっちにしろ、事情を知ってても知らなくてもそいつは伯爵に狙われるだろ。ただ傍にいて守ってやればいい」
ティエドールたちを迎え入れ、次はアジア支部へと向かう事となった。
本部に連絡するために、電話を借りようという話になったからだ。
しかし起きたばかりの不二やまだ目を覚まさないユキサがいるため、彩音や神田は方舟へ残っていた。
ティエドールに方舟内での出来事を話す。
「そうか…不二の変化に、ユキサちゃんのまた新しい体質ね…」
それにクロスが何かを知っている、か…。
ティエドールは小さくため息を付きながら頭をポリポリとかいた。
「ま、奴がそう言ってるなら絶対話してはくれないだろうし、今はどうしようもないね」
ユキサちゃんが何か知っているのなら別だけど、とティエドールは言う。
「それより、皆が無事で本当に良かったよ」
「あぁ!方舟が消えた時はどうしようかと…」
「元帥…マリ…」
うっすらと涙を浮かべる2人に神田はチッと舌打ちをしていたが、彩音はもらい泣きをしている。
本当に戻れてよかったと不二も微笑んだ。