第18章 第十七話 帰郷
彩音が聞くが、どこか上の空のユキサ。
アレンがピアノへ近づき、ポーンと鍵盤を押す。
「ほ、本船の『江戸接続』を解除。方舟よ、ゲートを開いてくれ」
メロディが流れ、ピアノから白い光が広がっていく。
それを見ながら、ユキサが口を開いた。
「『そして坊やは眠りについた』…」
「!!!!」
歌うユキサに周囲は呆然とする。
アレンは驚きながらも弾くことはやめずゲートをティエドールたちがいるであろう場所へと繋いだ。
その間もユキサは歌い続けていた。
方舟のゲートが無事繋がり終わると、アレンがユキサの肩を掴む。
「なぜ…!なぜその歌を!?」
振り向いたユキサに、アレンがびくりと体を震わせた。
ユキサの瞳の色が、右目だけ金色になっていたからだ。
驚いて彩音もユキサの名を呼んだ。
「あたしは…この曲を知ってる、だけ…」
「ユキサ!!」
言葉と同時に、ふっと意識を失った。
倒れ込むユキサを、慌ててアレンが抱える。
一体何が起こったのか周りが困惑している所に、馬鹿弟子とクロスの声が響いた。
「外へ行ってこい。全員方舟へ乗せろ」
「え?で、でも…」
そいつはオレが見てると言われて一瞬戸惑ったが、やがてアレンは不二とは別のソファにユキサを寝かせ、ラビたちと共に外にいるティエドールたちを迎えに行った。
当然、彩音は不二が心配で残っており、神田もユキサのことでその場に留まった。
神田もクロスもしゃべるタイプではないので、自然と部屋の中は静かになる。
空気に耐えきれず、彩音がクロスへ問いかけた。
「あ、あの!クロス元帥…ユキサのこと…」
「………」
フー…とタバコをふかすだけのクロス。
答える気はないようだった。
だが、沈黙するという事は何か知っているということなのだろうか。