第18章 第十七話 帰郷
「お前も人のことは言えないだろ」
「私は命は支払ってないよ」
そういう意味じゃねェと神田は胸に当てているユキサの手を取って引き寄せた。
命だろうとなんだろうと、自分を犠牲にしているのはユキサも同じ事だ。
今回も自分を犠牲にして神田を救おうとした。
じ、と見つめてくる神田から、ユキサは視線をそらす。
「じゃぁ私が無茶な戦いをしなければ神田もやめてくれるの?」
「それは約束できねェな」
どっちみちダメじゃない…。
そう思ったユキサがため息を付きながら再び神田の背後に回って抱えた。
スノーベルのまま降ろせばいいものの、何故か再び抱えられて神田は居心地が悪そうな表情をしている。
なにせ今の神田は上半身が裸なのだ。
ユキサが裸じゃなくとも、普段よりもユキサのぬくもりを感じて落ち着かない。
「じゃ、実力行使に出るしか無いね」
「は?」
何をする気だと地面へ降ろされた神田が振り返ると、ユキサが意地の悪い笑みを浮かべる。
私の言霊はなんでもできるんだからねと言って、アレンたちの元へと歩き出した。
「会いたかったよティムキャンピィィィ!!!」
また大きくなったんじゃないかお前ー!なんでだぁぁぁ!!
ティムキャンピーを定規で測りながら、叫び泣いているアレン(とティムキャンピー)を見て、ユキサが苦笑する。
歩いてきた神田とユキサに気づいて、アレンがじっと神田を見た。
「…。神田ぁ~、ずっと気になってたんですけど~…」
その胸の模様、そんなタトゥー入れてましたっけ?とアレンが言う。
プイ、と顔を逸して、心底鬱陶しそうに別にと神田が答えた。
瞬間、アレンと神田のスイッチが入る。
「会話になってませんね、神田。はいっ言葉のキャッチボール!」
「ウゼェ奴!!」
「何故いがみ合う…」
会えばすぐ喧嘩になる。
でも喧嘩するほどなんとやらというやつだ。
呆れるラビと、アレンを複雑な表情で見るチャオジー。
チャオジーの様子にユキサは首を傾げていた。
「それより外に出られねェのかよモヤシ!」
「アレンですってばこのヤロウ!」