第17章 第十六話 ツインズ・ルーム
「(本物じゃないだろうけど…威力は…!!)」
続けて追ってくる伯爵の攻撃を不二は避ける。
不二!とアレンが走った。
「伯爵は僕が相手をします!不二は彩音のところへ!」
言われて彩音を見ると、彩音はジャスデビと撃ち合いをしていた。
うん、と頷いて彩音の元へ走る。
そしてフッと姿を消すと、ジャスデビの懐へと飛び込んだ。
「げっ…もう来やがった!」
「周助!」
避けたジャスデビが大きく飛んで、赤ボムを撃ち込んでくる。
幻と本物が同時に見えている以上、複数打たれた場合は結局どの火球が本物か分からない。
「なら…全部消しちゃえばいい!」
彩音が頭上にウォーターショットを打ち込む。
火球は雨で消滅し、不二が姿を消す。
またか!と構えたジャスデビを、不二が背後から斬り付けた。
そのまま壁に叩きつけられ、本がバラバラと落ちる。
「面倒だな…」
崩れた本の山から忌々しげに舌打ちをしながらジャスデビが顔を出す。
とその時、目のペイントがスー…っと溶けていった。
そうしてラビがいた所から光が発せられる。
「ラビ!鍵を見つけたのね!」
ラビが立っていた台座も光だし、ゆっくりと扉が開いた。
伯爵がその奥へと吸い込まれていく。
しかし同時に、辺りの空気が突然重くなった。
「なんさ…?」
「遊びはやめた…マジで消しちゃうわ…!」
「アレン!皆を連れて早く次の部屋へ…」
ジャスデビの異様な雰囲気に、不二が声をかける。
全員の耳に、光り出したジャスデビの歌声が響いた。
『ゆりかごか ひとつ現った
ゆりかごに ひとつが在った
ひろつは ふたつに 為った
ゆりかごはひとつ
霧に紛れて星ひとつ
墓場でゆれて 消えていくよ』