第15章 第十四話 江戸
ユキサの真剣な表情に、ティエドールは再び深く考え込む。
ティエドールの許可をもらおうとしてはいるが、おそらくユキサはほぼやる気だろう。
成功すればリスクが低くなるのだ。
ティエドールはちらりとリナリーにも視線を向けた。
「リナリー。キミはどう思う?」
「っ…!」
聞かれて、言葉に詰まる。
今の自分は足手まといでしか無い。
戦う事もできない自分が、もしかしたらハートのイノセンスを持っているかもしれない。
敵に易易と奪われるわけにはいかないのだ。
だけどユキサの体も心配だ。
心配そうに見守る周囲をちらりと見て、リナリーが小さく息を吐いた。
「ユキサ…。もし少しでも不調を感じたら、戻すと約束してくれる?」
「もちろんだよ。リナリーを助けられても戦えなくなったら意味がないから」
たっぷりと間を置いて、リナリーは頷いた。
「何が起こるかわからないので、離れていてください」
特に一般人のチャオジーたちはイノセンスの気にあてられてしまう。
言われて皆離れたが、神田だけはユキサの近くへと残った。
神田、と諫める声を無視して、ここにいるとだけ神田は言った。
離れる気のない神田に小さくため息をついたユキサだったが、少しだけ微笑んでいた。
辺りが静まり返る。
「それじゃぁリナリー…」
深呼吸して、体の力を抜いて。
ユキサに言われた通りに、リナリーがゆっくりと深呼吸をした。
リナリーの足に手を翳したユキサが光り出す。
その光に目が眩んだ周囲だったが、光はすぐに止み、辺りに静けさが戻った。
リナリーの足の模様が消えている。
「成功…したのか!?」
「リナリー!ユキサ!」
大丈夫ですか!?とアレンが駆け寄ってくる。
リナリーも特に問題なく足を動かすことができ、ユキサも意識ははっきりしているようだった。
神田がユキサに声をかけると、問題ないと返事が返ってくる。
「本当に大丈夫よね?」