第15章 第十四話 江戸
もしかしたら…。
「イノセンスを、取り出せるかもしれない」
「え!?」
ユキサの言葉にリナリーが驚く。
リナリーが上手く歩けないのは、イノセンスが原因であろう事は確かだ。
だが、取り出していいものなのか悩む。
リナリーのイノセンスが特別なのは伯爵側にもバレている。
ならば取り出してしまえば、最悪の場合、壊される事は免れるだろう。
それにもしも取り出した事でリナリーの足が動けば、前よりも動くことは可能だ。
ス、とユキサが立ち上がる。
「ティエドール元帥に聞いてくるね」
「うん…」
リナリーも考えているようで、ユキサはその様子を見ながらティエドールを呼びに行った。
「本当に取り出せるのかい?」
ヘブラスカと同じような事が出来るのか。
さすがに周囲も驚きを隠せなかった。
「出来ます。ただ…取り出した後は私の体内に吸収されると思います」
「それは危険よ!」
リナリーのイノセンスは、適合者はリナリーだけなのだ。
他者のイノセンスを体内に宿せば、どうなることか。
リナリーの焦ったような表情に、ユキサが首を振った。
「多分、大丈夫」
「多分って…!」
「ティエドール元帥。今のままだとリナリーの体の事もありますし、リナリーのイノセンスが狙われているという事実は変わりません。ならば私が持っている方が、まだ良いかと思います」
もちろん敵はリナリーを狙ってくるだろう。
だがリナリーがイノセンスを持っていないと知れば、伯爵側の攻撃も多少は収まるかもしれない。
あとはリナリーのイノセンスを吸収する事で、ユキサの体に何か影響がなければ良いのだが。
ふむ…、と考えた後、ティエドールが言う。
「ユキサちゃん、本当に体は大丈夫なのかな?」
「はい。…それに、もし危険そうならリナリーに返す事も可能だと思います」