第15章 第十四話 江戸
リナリーがそっとアレンの頬に手を添えた。
「スーマンのことなら、アレンくんは救ってくれた…」
無惨に殺されただけじゃないよ。
スーマンの心はきっと、アレンくんに救われてた。
―――――おかえりなさい、アレンくん
「…だ、いま…」
ただいま…リナリー。
アレンの瞳から、涙が溢れた。
「あらー?アレン、泣いちゃったさー?」
「なっ…!ラビ!!」
「ふふ…ラビも船の上で泣いていたくせに」
ギャーギャーと騒ぎ始めるアレンとラビに、彩音が笑みを零す。
犠牲はたくさんいたけれど、こうしてまた皆が揃った。
本当なら、アレンたちの任務を手伝いたいところだけれど。
『クロス部隊の任務に参加する事は許可できないからね』
適合者探しの任務より、最前線で戦う事になるであろうクロス部隊。
ただでさえハートの可能性を秘めているリナリーを連れており、そこへ同じく特殊な体質を持っているユキサや彩音を加えるのはとても危険だった。
そのため、ティエドールはユキサたちに予め念を押していた。
クロス部隊の任務を手伝う事ができない。
クロス元帥と合流すればきっと大丈夫だろう。
願わくば、皆が無事に戻ってこられますように…。
心の中でそっと、彩音は強く願った。
リナリーも起きた事で、全員が旅支度を始める。
何かクロウリーと話している神田を見ながら、ユキサはリナリーへと近づいた。
足に力を入れて立とうとするリナリーを制止し、足に手を翳す。
ヒール、と唱えても何も変化はない。
「リナリー、ちょっと触るね?」
「え?う、うん…」
模様が入っているリナリーの足に触れる。
イノセンスの気の流れを、ユキサは感じた。