第15章 第十四話 江戸
「ケホッケホッ…」
「ユキサ!大丈夫!?」
羽をしまって地上へ降りたユキサが咳き込んでいると、アレンが寄ってくる。
うん、と返事を返すと、伯爵を見失ってしまったとアレンが言った。
近くにフォースフィールドの光が見えて、2人がそちらへ歩こうとした時だった。
「まちやがれコラァ!!」
「!!」
「ひぃ!!か、神田!?」
「モヤシ…?」
「アレンです」
煙の中から、神田が飛び込んできた。
咄嗟にアレンがユキサを抱えて左腕で刀を受け止める。
なんだが前にもこんな事が…とアレンが教団へ来た頃の事をユキサが呑気に思い出していると、2人の間で険悪な空気が流れ出す。
「どういう事だ?」
「僕が聞きたいんですけど」
「俺は天パのノアを追ってきたんだ!」
サァァァ…と煙が晴れてくる。
辺りを見回すが、伯爵もノアの姿も見当たらなかった。
あ、と彩音が3人の姿を見つけて、こちらへ駆け寄ろうとするが、3人(正確にはアレンと神田)の纏う空気に足を止めた。
「ちっ」
「ちょっと…なんで僕に舌打ちするんですか。逃げられたのは神田が『ノロマ』だからでしょう」
「おい、今なんつった。つかテメェ、あとからノコノコ現れて何言ってんだよ『ノロモヤシ』」
「アレンですって何回言えばいいんですか?ああそうか、神田は頭もノロマなんですね」
「いい度胸だ。どっちがノロマか教えてやるよ。抜け、その白髪根こそぎ刈ってじじい共に売ってやる」
「黒髪の方が高く売れるんじゃないですか」
「あの…ここ、一応感動の再会…」
「「うるせェ刈るぞ」」
見かねたラビが恐る恐る声をかけるが、2人に鋭い眼差しを向けられ、縮こまってしまった。
一方未だアレンの腕の中で静かにしていたユキサが『白髪』と言葉に反応して自分の髪を触っていると、神田がグイ、とユキサの腕を引く。
そんな神田の様子に少し驚いていたアレンだったが、ミランダやティエドールたちもやってきてその場から離れる事となった。
「神ノ道化<クラウン・クラウン>、リナリーのハートの可能性、ユキサや彩音、それから不二の体の異変…」
「改造AKUMAに生成工場、ノアの方舟ねぇ…」