第15章 第十四話 江戸
「ユキサ…!アレン、周助!!」
リナリーを抱えながら呼ぶが、返事がない。
煙が多くてどうなったのか見えないが、ここから出るわけにもいかなかった。
「そういえば…他の皆の戦闘音も聞こえない…」
「彩音…」
よろよろと近づいてきたのは不二だった。
無事だったことに喜ぶ彩音だったが、先程の不二の様子を思い出してじっと見つめる。
「リナリーは大丈夫なのかい?…ってどうしたの?彩音」
「う、ううん、なんでもない!リナリーは、結晶は解けたみたいなんだけど、すぐ意識を失って…」
呼びかけても起きない。
先程のユキサの治癒魔法のおかげか大きな怪我もないリナリーだが、意識だけが戻らない。
彩音が不安そうにしているところへ、ラビとマリが光を頼りにやってきた。
「リナリー!」
「ラビ!リナリーが目を覚まさなくて…」
ラビにリナリーを渡すと、ラビが大丈夫だと頷いた。
前になった時もこうして意識を失っていたけど、すぐに目を覚ましていたと。
その言葉を聞いて彩音がホッと安心する。
ふと、マリが不二へと声をかけた。
「不二…大丈夫か?」
「え?」
「そうさ!不二お前…さっきなんか様子がおかしかったろ!」
同意するようにラビも不二に声をかける。
不二自身は見に覚えがなかったのだが、どうやら2人の話によれば、伯爵がリナリーの所へ近づいた時に相手をしていたノアをマリとラビに任せて彩音の元へ行ったというのだ。
その時の不二の髪は銀色に輝き、目は虚ろだったという。
「その姿は…私も見た。周助、本当に大丈夫なの?」
「ごめん、何も覚えていないんだ…」
思い出そうとしても、不二は何も思い出せなかった。
自分が気づいた時にはアレンが近くにいて倒れたリナリーの元へ伯爵が襲いかかっている所で、そこでユキサに守られたという事だった。
「………」
リナリーの現象に続いて、ユキサの光、不二の変化…。
考えてから、ラビは小さく頭を振った。