第15章 第十四話 江戸
一行は橋の下で暖を取りながら一時の休息を取っている。
互いの情報を共有し、ブックマンとティエドールが話している間、ユキサがリナリーへ治癒魔法をかけていた。
「今、この世に存在する全てのエクソシストは教団にいるヘブラスカ、ソカロ、クラウド、マリアン…そしてここにいるたった12人しかいなくなってしまったんだよ」
クロス部隊はクロスと合流してAKUMA生成工場を破壊する事が目的だった。
しかし今は千年伯爵と戦うべきではない。
自分たちはこのまま適合者探しに戻るつもりだが、クロス部隊は戦線を離脱するべきではないか。
「キミたちを…危険に晒したくはないんだ」
ティエドールの言葉に、全員が黙り込んだ。
しばしの沈黙の後、口を開いたのは意外にもラビだった。
「進むべきか、引くべきか、か…。でもティエドール元帥、実はオレたち、それと同じ言葉を前にも聞いてるさ」
ちょめ助と呼ばれていたクロスが改造したAKUMA。
江戸までの道を案内してくれた。
そのAKUMAが、クロスから足手まといになるなら帰れと伝言を受け取っていた。
江戸はすでに伯爵の町、命がけの戦いになるし、きっと日本からは簡単に出られなくなるだろうと。
「でも、ここにいる眠り姫がさ」
眠っているリナリーにラビの優しい視線が送られる。
『進もう。ここで戻るなんて出来ないよ。ここで戻ったら、道となってくれた人たちの思いを踏みにじることになる』
「そしてオレらは、どんなにボロボロになっても進むことを決めたんさ」
すすり泣く声や強い眼差しを向けている視線。
クロウリーやミランダ、チャオジーが頷く様子を見ながら、ティエドールがキミも同意見かね?とアレンへと問いかけた。
アレンははい、僕も前へ進みたいですと強く頷いた。
はぁ、とため息をついたティエドールが立ち上がった。
「それなら、もう何も言わないよ。…これまでの道も大変だっただろうが、これから先は…本当に茨の道だよ」
「アレンたちとは一緒に行かないって事だったし、ティエドール元帥は相当クロス元帥の手伝いはしたくないんだね」
「教団から連絡が入って急遽江戸へ行く事になってたけど、本来の任務は適合者探しだしね」