第15章 第十四話 江戸
「不二!!」
「『蜉蝣包み』」
アレンの呼び声にも反応無く、不二は反撃技を発動させる。
伯爵の闇の玉を光が包み込み、それを伯爵へと返した。
一瞬怯んだ伯爵の隙を見逃さず、アレンが左腕を振り上げる。
「新しい対AKUMA武器!?…って、リナリー!?」
アレンを見ていた彩音だったが、ドサリと音がして振り返る。
慌てて駆け寄ってリナリーに呼びかける。
ぴくりと反応した伯爵が、不二とアレンの攻撃をかわしてリナリーへと襲いかかる。
「しまったっ…!」
走り出したアレンと不二だったが、不二がぐらりとその場に膝をついた。
ハッと我に返った不二が呟く。
「僕は…一体なにを…」
「リナリー!」
アレンの叫び声に顔を上げた不二が、彩音を見る。
今まさに伯爵が襲いかかろうとしている時、凛とした声が響いた。
「『フォースフィールド』」
リナリーと彩音を覆った光の結界が、伯爵を弾き飛ばす。
「ユキサ!」
「『ヒールウインド』」
涙を滲ませながら振り返った彩音に小さく微笑み、ユキサは唱えた。
瞬間、周りにいる全員の傷が癒やされる。
「なるほド。これがティキぽんの言ってたやつですカ」
伯爵がニヤリと笑い、ユキサへ狙いを定める。
ユキサは羽を発動して伯爵の攻撃を上手く避けた。
「ユキサ!」
アレンが伯爵へと襲いかかる。
伯爵がそれを軽々と受けて持っている傘を大剣へと変化させた。
ドンッと伯爵とアレンがぶつかり合う。
「その姿…まるで"愚かな道化”を追い回す"白い道化”のようじゃあないですカ」
伯爵がニヤリと笑った瞬間、辺りに爆風が巻き起こった。