第14章 第十三話 白銀の記憶
「熱…い……。あ、つ……」
「しっかりしろ!」
うわ言のように呟きながら、ユキサが意識を失った。
光が徐々に収まり、彩音の息苦しさも治まってくる。
呼吸を整える彩音に、大丈夫かいと不二が問いかけた。
「大丈夫…でも今、リナリー、って…」
「………」
海上なら連絡も取れない。
大丈夫だ、リナリーたちならば。
そう信じるしかなかった。
狭く揺れる汽車の中ではユキサを寝かせる事が出来ない。
椅子に寝かせて転げ落ちても大変だから、神田がユキサを支えておくようにとティエドールは言った。
たまに落ちないように支える神田と、神田に寄り掛かるユキサを見て、彩音と不二は見慣れたもんだと思った。
だがこちらを見る2人に神田は居心地が悪そうに眉を顰めた。
「…なんだ」
「う、ううん、なんでもない!」
フフ、と不二が楽しそうに笑っているのを見て、神田の機嫌は更に降下した。
「う、うぅん…」
しばらくしてユキサが目を覚ますと、神田が大丈夫かと声をかける。
うとうとしていた彩音もハッと目が覚めて、ユキサに声をかけた。
「大丈夫…」
3人がユキサの次の言葉を待つ。
ユキサも話さなくてはならないと分かってはいるが、喋ろうとすると、声が震えた。
「ユキサ」
神田が名を呼びながら、手でユキサの頬に触れる。
澄んだ青の瞳が、揺れる赤い瞳を捕らえている。
その様子に彩音と不二が驚きのあまり固まっていた。
またこの2人は…!!ていうかいつから神田はユキサの名前を!?