第14章 第十三話 白銀の記憶
「ユキサ!大丈夫だった!?」
神田と共に歩いてくるユキサへ、彩音が抱きついた。
バランスを崩しそうになるも耐え、その背中をよしよしと撫でる。
「大丈夫。ありがとう、ごめんね」
「ううん、よかった…」
後ろにいる不二とも視線が合って、ユキサが微笑んだ。
「それじゃぁ戻ろうか。異常気象も収まったことだしね」
ティエドールの言葉に全員が頷く。
その意味を理解したユキサが一度洞窟を振り返った。
「(ありがとう、私の大切な…)」
―――――お母さん。
きっと、そんな温かい人だった。
名前を呼ばれて、ユキサは彩音たちの元へと走った。
街に戻ったティエドールたちは事の顛末をナギサに伝えた。
そんな事が…とユキサの方を見て、ナギサが小さく微笑む。
「ありがとうございました。私は引き続きこちらでAKUMAの様子を探ろうと思います」
「ナギサも気をつけるんだよ」
はい、とナギサがティエドールへ返した。
江戸での戦いは今もなお続いている。
日本全体が他の国よりもAKUMAの侵攻が激しいため、ファインダーたちも日本各地でAKUMAの情報を探っている。
ナギサがその場を離れようとした時、シオンが遠くから走ってきた。
「もう行くのか?」
うん、とユキサが答える。
異常気象も収まり、自分たちは本来の目的、江戸へと向かわなくてはならない。
「気をつけていけよ」
「分かってる。シオンも気をつけて」
ギュッと抱擁を交わし、シオンに別れを告げた。
多くを聞かないシオンに、ナギサが首を傾げた。
「よろしいのですか?『しばらく』、お会い出来なくなると思いますが…」
「いいんだ、ユキサの傍にはあいつもいてくれる。それに…」
また会える。
歩き出したナギサに、シオンは着いていった。