第14章 第十三話 白銀の記憶
―――――さっきからずっと呼ばれている。
氷の洞窟へ入った時から、神田の頭の中にはずっとユキサの声が響いていた。
その声を辿って奥へ奥へと足を進めると。
「これは…」
大きな氷塊が置かれている場所へと出た。
近づいてよく見ると、その中にユキサが眠っている。
触れても冷たくないその氷塊は、どうやら水晶のようだった。
「おい」
目を覚ませ、と声をかけると再び頭の中で声がした。
『神田、どうして来たの?』
「お前が呼んだんだろ」
『…。私、AKUMAの仲間かもしれないんだよ?』
雪女との記憶から、そう思ったのだろう。
「お前はエクソシストだろ」
『だけど…』
「何を迷ってる。AKUMAを倒して皆を守る、とか言ってたのは誰だ」
『私は、私が怖い』
何者なのか分からない自分が怖い。
そんなことか、と神田が呆れたようにため息をついた。
「お前はお前だろ」
『神田…』
「…いいから起きろ」
かつて、目覚めていいのかと呟いていたユキサ。
置いていかないでと伸ばした手。
その手を掴んだ時のように、神田が手を伸ばす。
「起きろ!ユキサ!!!」
パリン…と、水晶が割れた。
ふわりと落ちてきたユキサの手を取って引き寄せ、その体を抱きしめる。
「神田」
「なんだ」
「初めて…名前呼んでくれたね」
嬉しそうに笑ったユキサを見て、神田も小さく笑った。