第14章 第十三話 白銀の記憶
記憶操作の言霊は、使った相手の記憶を消すが、その消した記憶はユキサへ流れ込む。
その説明に彩音が呆然と立ち尽くした。
「それじゃあポーランドの時…」
「けれど私との記憶を思い出した彼女にさっきの話をしたら、思いっきり振られちゃった」
未だ赤くなっている手を見て、擦りながら雪女が言う。
そうして再び神田の方へ視線を向けた。
「伯爵様はこれからも彼女を狙い続けるでしょう。お願い、彼女を守って。イノセンスがある限り、絶対AKUMA側には来られない」
「……言われなくても」
神田の言葉に雪女がホッと安心したような顔をした。
ユキサが記憶操作をしようとした時、共鳴したかのように雪女も言霊が発動した。
その時に見た、ユキサの神田への想い。
「彼女はあの奥にいるわ。…もう思い残す事はない。殺してちょうだい」
笑う雪女へ、神田が六幻を向ける。
―――――そうして、雪女は静かに雪原に溶けていったのだった。
氷の洞窟内へ足を踏み入れた5人。
「氷の洞窟なはずなのに、寒くないね?」
「そうだね…」
辺りを警戒しながら進む5人の前に、光の壁が出現した。
ぶつかりそうになった彩音を不二が引っ張る。
コンコン、と彩音が壁を叩いた。
「この壁…ユキサの魔法…?」
「ふむ、我々を拒んでいるのかな?」
ティエドールがうーんと考えていたが、神田が迷いなく進んだ。
ス…と神田が壁を通り抜ける。
あれ!?と彩音が驚いたように壁に近付くが、彩音は通り抜けられなかった。
「どういうこと…?」
「神田しか入れないって事か」
そうしているのはユキサなのか。
少しだけ寂しく感じながら、彩音と不二は神田を見送った。