第2章 第一話 黒の教団
「発動の挙動が不安定になっていた。私の方で調整させてもらった。数日はこの2つは発動しにくいと思うが、我慢してくれ…」
こくり、と頷いたユキサを、アレンの傍へそっと降ろす。
地に足がついたが力が入らず、ふらついたユキサを支えたのはアレンだった。
大丈夫?と少し心配そうに顔を覗き込む。
大丈夫と返事をしようとして、声が出ないことに気づいた。
そのまま、意識も遠くなっていく。
近くでアレンが少し焦りを滲ませた声で呼んでいるのが聞こえたが、そのまま意識は闇へと沈んでいった。
ーーーーーーアレン・ウォーカー。お前のイノセンスは、いつか黒い未来で、偉大な時の破壊者を生むだろう…。
その言葉を、最後に聞きながら…。
次にユキサが目を覚ましたのは、アレンに背負われて暗い廊下を歩いている時だ。
左腕は麻痺しているため、器用に右腕だけで背負っているようだった。
アレンを呼ぼうとして、声が出ないのを思い出し、トントン、と肩を軽く叩く。
「あ、目が覚めた?」
視線だけ向けられて、そう声をかけられた。
降ろしてくれるように体を動かすと、大丈夫?と聞かれたため、頷いてアレンの背から降りる。
ありがとう、とゆっくり口をパクパク動かした。
「気にしないで。コムイさんによると、声が出なくて体が本調子じゃないのはヘブラスカが発動の調整をしたからだって」
確か、ヘブラスカもそんな事を言っていたような…。
そうして考え込んでいると、アレンが少し先を歩き始めた。
「ユキサの部屋の場所も僕の部屋と近いみたいなんだ。行こう」
なんとか部屋まで着いたユキサは、部屋のベッドに倒れ込む。
あのあと、アレンに着いて歩いていたが一向に部屋に到着する気配がなく、たまたますれ違ったリナリーに道を教えてもらった。
どうやらアレンは極度の方向音痴なのだろうと、その時知ったユキサ。
(イノセンス…)
首についているクローバーのチョーカーにそっと触れる。
自分の持っている力が全てイノセンスだった。
ならば…、と改めて決心する。
(エクソシストとして、AKUMAと戦う)
ふと、そういえばスノーベルの姿が見えないなと思った。
教団へ来てから服の中から出てきてなかったはずだが、今服の中を覗いてもスノーベルはいない。