第2章 第一話 黒の教団
続いたコムイの言葉に、ふわりと、アレンの背後に白い姿が飛び出してきた。
驚くアレンをよそに、白い手が絡みつくと体が浮かび上がる。
アレン!と羽を発動させたユキサが慌ててアレンを追うと、そのままユキサも白い手に捕らえられる。
アレンは左手から、ユキサは背中から体全体に何かが流れ込むのを感じた。
アレンは反射的にイノセンスを発動しようとするが、発動しない。
「無理無理、明日まで動かないって言ったでしょ~?」
「コムイさんっ…!」
慌てるアレンをよそに、コムイは白い姿…ヘブラスカに話しかけていた。
その間にも体中を探られているような感覚に、アレンは無理矢理イノセンスを発動する。
「ぐっ…!!!」
「神経が麻痺しているのに無理に発動しちゃだめだ…」
ぐにゃり、と不完全に発動したイノセンス。
それを優しく包み、私は敵ではない…と呟きながらヘブラスカが額をアレンに近づける。
一方で同じく捕まっているユキサも、体中に感じる不快感に唇を噛んで耐えていた。
先程発動した羽は無く、背中の辺りと首、右の太腿の3箇所が特に不快感が強く、額に脂汗が浮かぶ。
「53%…83%…。どうやら83%が今お前と武器とのシンクロ率の最高値のようだ…」
シンクロ率は、対AKUMA武器を使うための生命線。
数値が低ければ低いほど適合者が危険になる。
脅かすつもりはなかった、と小さく謝罪を口にし、ヘブラスカはユキサの方へ振り向いた。
「そしてお前のシンクロ率だが…。ユキサ、と言ったか」
ユキサはギュッと目を閉じていたが、呼ばれてうっすらと目を開ける。
「お前は3つ、イノセンスを持っている…」
「なんだと!?」
ざわっ…と大元帥たちが騒ぎ出す。
イノセンスの複数所持者はほとんどいない。
それなのにこんな小さな少女が3つも所持しており、かつ既に使用して戦えているのだ。
「シンクロ率は安定してはいるが、細かい数値を見る事が出来ない。決して無理はしないように…」
それから…と、ヘブラスカは白い触手のようなものを背中と首へ伸ばす。
触れた瞬間、ビクリとユキサの体が震え、ゴホッと咳き込んだ。