第14章 第十三話 白銀の記憶
呼吸を整えながら、ティエドールたちは足を止めた。
大きな氷の洞窟の前に、雪女が背を向けて立っている。
六幻を持ったまま歩く神田の足音に、雪女が振り返った。
「来てしまいましたか」
「…あいつはどこだ」
「やはり吹雪を起こせないのは困りますね」
こうしてエクソシストが来てしまう。
振り返った雪女の手が、赤く腫れており、雪女が小さく擦った。
「あいつはどこだと聞いている」
「彼女は奥で眠っています。あなたたちに渡す気はありません」
「神田!!」
答えた雪女へ、神田が飛びかかった。
ガキィン!と雪女が氷の剣で神田の六幻を受け止める。
ふう、と息を吹きかけられ、神田の手が僅かに凍った。
ハッと距離を取った神田と同じように雪女も後ろへ距離を取り、空を飛ぶ。
「彼女は渡さない。ここで私と一生過ごしてもらいます」
目が不気味に赤く光り、雪女の周りに鋭い氷塊が出現する。
次の瞬間、無数の氷塊が辺りに降り注いだ。
「楽園ノ彫刻<メーカー・オブ・エデン>、発動!抱擁ノ庭!!」
ティエドールの言葉と同時に、辺りが白い植物たちに包まれる。
氷塊は遮られた。
「なに、これ?」
「抱擁ノ庭。教団一の防御力を誇ると言われている師匠の技だ」
マリが彩音にそう答えた。
ふむ、とティエドールが口を開く。
「あのAKUMAはレベル3だね」
「え!?」
「神田と互角に渡り合っていた。音もいつもと違う…間違いないだろう」
倒せるかい?とティエドールが4人を見た。
―――――倒せるか、だって?
「当たり前だろ」
「それに倒せるかじゃなくて倒さないとですよね」
「私も…ユキサを助けるために!」