第14章 第十三話 白銀の記憶
「聖人ノ詩篇<ノエル・オルガノン>!」
「はあ!!」
迫るAKUMAをマリが縛り、不二と彩音がAKUMAを破壊する。
神田も六幻を振りかぶりながら前を走っていた。
「な、なんかAKUMAの数が多くなってない!?」
「…奥には近づかせたくないって事か」
AKUMAを切り捨てて、足を止めていた神田が再び走り出す。
吹雪が止んでいるのがいつまで続くかわからない。
スノーベルを追って、5人は走っていた。
「ユキサ、大丈夫かな…」
「大丈夫だよ。この吹雪もユキサがなんとかしてくれたんだろうと思うし」
あの吹雪を起こしているであろう雪女が自ら止めるとは思えない。
ならば雪女に何かしらダメージを与えてくれたのか…。
前方に新たなAKUMAたちが現れる。
「業火の竜よ…AKUMAを焼き尽くせ!!」
フレイムショット!
彩音が放った矢が1体のAKUMAに刺さる。
その瞬間炎の竜が出現して、近くのAKUMAを巻き込んで燃やしていく。
「ほぅ…やるねぇ彩音ちゃん」
ティエドールにありがとうございますと彩音が返す。
更に続けてAKUMAが現れる。
舌打ちをする神田の横を、不二が駆けた。
そうしてフッ…と不二の姿が消える。
思わず神田が目を見張ると、次の瞬間、目の前のAKUMAたちが破壊された。
「…お前」
「彩音たちに負けてはいられないからね…」
破壊されたAKUMAたちの中に佇む不二の姿。
反撃スタイルの不二の、数少ない攻撃技。
「周助、凄い…」
「習得にかなり時間がかかってしまったけどね」
フフ、と笑った不二のなんとも涼しい顔である。
こういう事をさらっとやってのけるから天才だなんて言われるのだ。
神田が心の中で悪態をついたのを、誰も知らない。