第14章 第十三話 白銀の記憶
え、と彩音が思わず呟いた。
AKUMAなのに人を襲わない?
ポーランドでの状況と少し似ているような…。
「とりあえずそのAKUMAのところへ、行ってみるしか無いだろうね」
ティエドールが席を立つのを見て、一行は続いて立ち上がる。
酒場を出る前、神田がユキサのマントのフードを被せた。
見た目が目立つため、周りの視線を集めてしまうからだ。
「被っとけ」
「うん」
その様子をナギサが優しい瞳で見つめていたのを、彩音が見ていた。
「それでは私はここで…」
村跡まではユキサが道を知っているので、ナギサは別で情報収集をするため別れる事になった。
ふと、ナギサと入れ違いのように、ユキサの名が呼ばれる。
振り返ればそこに立っていたのは、ユキサの兄とも呼べるシオンだった。
「シオン!!」
「やっぱりユキサか!そいつを見かけたからまさかと思ったんだが」
そいつ、とは神田のことである。
感動の再会に抱きしめ合っていたが、眉を顰めている神田と目が合ってシオンがにやりと笑った。
途端、神田の表情が歪んだが、気づいていないユキサがシオンを見上げる。
「シオン、背が大きくなった?」
「お前も随分大きくなったな」
ちゃんとしたもの食ってるか?と聞かれてユキサはうんと嬉しそうに笑う。
その様子を見ていた彩音がユキサに問いかけた。
「ユキサ…その、その人は?」
ユキサはハッと我に返ってシオンから離れる。
そうしてこれから行く村で育った兄だと紹介した。
血の繋がりはないけれど、とても愛されて育ったんだと、2人の様子を見て取れる。
「そうだシオン、私たち村に行くところなんだけど」
雪女について何か知っていないか尋ねると、シオンが少しだけ戸惑ったような顔をした。
それを伝えようと声をかけたのもあるらしいシオンが、話し始める。
「俺も、その雪女に会ったんだよ」
「え!?」
「その雪女が、ずっとユキサの名前を呼んでたんだ」