第13章 第十二話 東へ
少しだけ頬を赤らめながら、ユキサが答える。
「別になにもないよ…。一緒に寝ただけ」
「寝ただけ!?本当に!?!?」
なんだか勢いが凄いなぁと思いながら、ユキサは昨夜の出来事を簡単に説明する。
自分を寝かせようとしてああなったと。
「……。あのさ、前から思ってたことなんだけど」
「ん?」
「神田とユキサって、距離感おかしいよね…?」
下手をしたら自分たちよりも自然に距離が近すぎて周りが驚くほどだ。
自分たちは幼馴染みだったし、お互い思い合っていたから分かるけど。
神田とユキサは付き合ってない。
「普通なら照れる所を平然とやってのけるし…」
私なんて朝どれだけ大変だったか…。
何かあったの?と聞かれるが彩音は顔を赤くしてなんでもないと答えた。
「なんで好きって言わないの?」
好きなんでしょ?と彩音に言われてユキサは言葉に詰まる。
「まぁ…好きだけど…」
「じゃぁ!」
「でも神田、好きな人いるから」
え、と彩音が固まった。
でも神田の行動は…よっぽど大切な人に向けるようなものばかりで…。
好きな人ってユキサの事じゃないの?
聞けば、ユキサがふるふると首を振った。
「ユキサはその人の事知ってるの?」
「あんまり知らないけど…でも神田が昔から想っている人で」
私の事は妹か何かだと思っているんだよ、とユキサが笑う。
そんなユキサの顔を見て、彩音が納得のいかなそうな顔をする。
「本当にそうかなぁ…?」
「そうだよ。あ、話した事は神田に内緒ね?」
「それは分かったけど…」
なおも複雑な表情を浮かべる彩音に、それで、とユキサが話題を変えた。
「不二とは何があったの?」
言われて昨夜を思い出した彩音が顔を赤くし、ユキサになんでもない!!と叫んだ。