第13章 第十二話 東へ
その言葉に彩音の背筋が凍りつく。
バルセロナでの大きな戦いの後、たくさんのエクソシストやファインダーが各地で亡くなった。
その中でスーマンは行方不明だった。
そのスーマンが、咎落ち。
「咎…落ち…」
「アレンが咎落ちしたスーマンの命を救おうとして…。…だけどノアの襲撃にあって、イノセンスを壊されたって」
不二の言葉に彩音が目を見開いた。
「そんな…そんな!!じゃぁさっきのは…」
「…アイツはそんなやわじゃねぇだろ」
狼狽える彩音と違い、淡々と言ってのけた神田に、不二がくすりと笑う。
「うん、そうだね。…アレンはアジア支部に引き取られたみたい。壊されたはずのイノセンスが、心臓に穴を開けられたアレンを救ったって」
「え…?」
心臓に穴を開けられたという事実にも驚いたが。
アレンのイノセンスは確かにノアに壊されたはずなのに霧状で残っていた。
そしてその霧がアレンの心臓の穴を塞いでいるという。
詳細を聞いて彩音は呆然とする。
ユキサや彩音の体質も異質だが、壊されたはずのイノセンスが壊れていなくて…。
しかもアレンの命を救った…。
聞いた事が無い事態に、神田も眉を顰めている。
と、そういえばと神田が思い出した。
「あいつが倒れた時…モヤシがどうのって」
―――――アレンを助けて。
あの時、ユキサは確かにそう言った。
アレンのイノセンスが壊され、アレン自身も殺される寸前だったのか。
いや、普通なら心臓に穴が開けば死からは逃れられないが。
「彩音はアレンのイノセンス、というのは分かっていたの?」
否定する彩音。
とはいうものの、ユキサもイエーガーの時は何も言っていなかった。
誰のイノセンス、というのを分かったのは今回だけ?
結局体の異変はよく分からないままだが、不二は言葉を続けた。
「アレンはアジア支部で療養とリハビリ中。…クロス部隊はアレンを抜いた、リナリーにラビ、ブックマン、クロウリー、それからミランダが合流して、教団のサポーターたちと共に江戸に向かってるって」