第13章 第十二話 東へ
今までは何かを失った感覚があったのだが、今回はその感覚はなかった。
神田がユキサを抱いて立ち上がる。
「宿を探すぞ」
「そうだね…彩音、歩ける?」
不二に支えられながらも、頷いて彩音はゆっくり歩き出した。
それからすぐに宿を見つけた神田たちは受付を済ませた。
あとから2人来ることも伝えて。
部屋は3部屋しか取れなかったため、2人ずつで分かれることになる。
ベッドは1つずつしか置かれてないが、床に布団を敷くスペースはあるという。
不二がおもむろに口を開いた。
「神田、ユキサと一緒の部屋でお願いできるかな?」
何故、と言いかけて神田は考え直した。
元々ユキサと彩音とそれぞれ一緒にいるようティエドールから言われている。
おまけにユキサと彩音の体の異変がいつ訪れるか分からない状態だ。
「…分かった」
「ユキサの事は頼んだよ」
他何かあったら連絡を、と不二は彩音と部屋へ入った。
神田も部屋に入り、ユキサをベッドへ降ろす。
と、神田を呼ぶ声が廊下からした。
「元帥に連絡してくるよ。神田はユキサを見ていて」
不二の言葉に、神田があぁと短く返事を返した。
数分後、どうやらティエドールと話し終えたらしい不二が再び神田を呼んだ。
どうした、と声をかければ、話があると部屋へ来るように言われる。
ちらりと一瞬ユキサを見て、神田は部屋を出た。
神田の部屋と不二の部屋は向かい同士。
両部屋の扉を少しだけ開け、ユキサの様子を見ながら神田は扉の横に背中を預ける。
不二がティエドールから聞いた話を話し始めた。
「アレンたちが江戸へ向かおうと中国で準備していた時にね、AKUMAの襲撃にあって」
―――――そしてスーマンが、咎落ちした。