第13章 第十二話 東へ
それから程なくして、ユキサがイノセンスを持って戻ってくる。
「ユキサ!大丈夫だった?」
「うん、AKUMAもいなかったし…」
言いながらティエドールにイノセンスを手渡す。
戻ろうとした一行だったが、神田が足を止めた。
「下はどうなってた」
ぴたり、とユキサの動きが止まる。
「気になるの?」
「どうなってた」
「別にどうにも。ただイノセンスが転がっていただけ」
淡々と答えるユキサに神田は違和感を覚える。
しかし話は終わったとでも言いたげに、ユキサが歩き始めた。
2人の様子を、ティエドールが見ていた。
「おかえりなさい!イノセンスは…」
「大丈夫、回収したよ」
そう言うと、研究員がお礼を述べる。
これで研究が続けられる、と言った。
「研究…あの、」
「彩音」
不二が言葉を遮り、首を振った。
あの研究施設はなんなのか。
だいたいの予想はついている。
ついているが…認めたくはない。
なんで、そんな事を…。
「ところで、上にいるAKUMAはいつ倒すのでしょうか?」
ユキサが口を開いた。
突然の言葉に周りは少し驚く。
しかし研究員は特に気にする風でもなく、平然と答えた。
「ああ。あのAKUMAは殺しませんよ、実験に必要なんです」
「……」