第13章 第十二話 東へ
「イノセンスを見つけたらそのまま回収して日本へ船で渡って下さい。船乗りたちには既に話しており、江戸に直接行くことは出来ませんが、江戸より少し北の地まで行けるかと思います」
新しい団服が入ったキャリーケースをショーンがティエドールに手渡し、よろしくお願いしますと言った。
その様子を見てマリがティエドールに持ちますと声をかける。
「それじゃぁ行こうか」
まだまだ長い汽車の旅になりそうだ、とユキサは思った。
「イノセンスの気配はするか?」
「ううん、今のところは…」
「マリ、AKUMAたちの気配は?」
「かなり遠くに少しだけ反応があります」
目的地はもうすぐのはずだが、まだ近くに反応はないと言うユキサとマリ。
だが目的地へ近づくに連れて、ユキサが徐々に眉を顰める。
どうした、と神田が声をかければ、ユキサが下を向いた。
「………。イノセンスの反応、下からする」
「まさか…地下?」
ユキサがこくりと頷く。
それも、かなり地下深くにあるようだ。
そうして一行は、目的の研究所へと到着する。
「AKUMAも地下にいるようです」
マリの言葉に、ティエドールが首を傾けた。
外にはAKUMAの姿がない。
なのにAKUMAは内部で発生?
「とにかく、下に降りてみるしか無いね」
そう言って足を進めた時、近くの建物から1人の男がやってくる。
格好からして研究員のようだ。
「ティエドール元帥!お待ちしておりました」
どうぞこちらへ、と慌てたようにして歩き出す。
「AKUMAはいないんですか?」
「つい先程現れて、我々が対処しました。しかしAKUMAの数も頻度も増えて…」