第12章 第十一話 夢現の大地
「はあー…やっぱり使えない。君、なんかしたんでしょ」
「あの言霊は今も広範囲にわたって発動し続けてる。あなたの能力はもう使えない」
ユキサの言葉にルーイが再び大きくため息をついた。
そうして観念したかのように両手を上げる。
「僕の負けだね。君たちの勝ちだ」
「…抵抗しないのかい?」
しないよ、とハッキリとルーイが言った。
その言葉に4人が目を見張る。
「僕ごときのAKUMAが、能力も使えないんじゃもう打つ手はない。それに、僕は元々争いは好きじゃないんだ」
「へぇ…あんな事をしておきながら、争いが嫌いとはね」
「ふふ、虐めるのは大好きなんだ」
ユキサが不快感を露わにしてルーイを睨みつける。
状況を知らない3人は首を傾げていたが。
「この国は、国王は自由を求めていた。誰もが好きなように生きられる、自由を」
僕はその夢を叶えたかっただけ。
「でも君たちは夢ではなく現実を歩いているんだね。だから僕は…ここで退場だ」
「ずいぶんあっさりなのね」
「そうでもないさ」
ユキサの言葉にルーイが神田、彩音、不二を見る。
夢があってもなくても、この3人は今苦しんでいるようには見えない。
ルーイはこの国の苦しみをずっと見てきた。
苦しみだけしか知らなかった。
前を見据えている3人に心を動かされた。
「さあ、僕たちを破壊してくれ」
その言葉に、神田が地を蹴った。
そうして六幻に斬られたルーイたちの魂は、天へと昇った。
「そうか。そんな事が…」
ティエドールとマリと合流し、今までの出来事を話す。
ダンケルン村でもそうだったが、AKUMAにも色々なAKUMAがいるんだと改めて知った。
ここにいたAKUMA、ルーイはただ自由に夢を見ていた。
この国の自由を求めていただけだった。