第12章 第十一話 夢現の大地
「イノセンス…!歌姫<プリマ>発動!!」
「なにっ…!?」
イノセンスの輝きに目を覆うルーイ。
「この地に穢れし欲望の怨嗟、それ全ては記憶を写し取る夢なり」
辺りに大きな地響きが鳴り響く。
「我が言の葉によりて、この地を現へ還す」
「や、やめろ!!」
「『リセット』」
かちり。
どこか遠くで、時計が止まったような音が聞こえた。
辺りが光に包まれていく。
「は…はは…。まさか、君に破られるとは。けれどいいのかい?あの3人はまた現実へ引き戻される。苦しみと共に」
「3人はそんなに弱い人間じゃない。夢ではなく、現実で望みを叶える事が出来る。…それに私たちはエクソシストよ」
AKUMAを滅ぼすまで、幸せな日々なんて訪れない。
だから私たちは戦い続けるのだ。
こんなところで夢に囚われている場合ではない。
「手厳しいね、君は。けれど3人は、今回の夢で君を忘れた事をどう思うだろうね。それも乗り越えられると思うかい?」
「もちろん。それに…その夢は無くなるから大丈夫よ」
夢を全て無かった事にする。
それは3人の夢も。
「なるほどね、君の能力か。でもそれは大きなリスクが伴うのだろう?…こんな力があるなら、最初から使っていればよかったはずだ」
「そうね。でも…死ななければ問題はない」
「どうかな。君の心が持つといいけれど」
ユキサがぴくりと反応を示す。
ユキサの相手を強制させる言霊は、強制させる前に思っていた相手の感情が直に流れてくる。
動作を強制する分にはそれほど支障はないが、例えば記憶を消したりする場合は、消した記憶が全てユキサに流れ込むため、脳への負担が大きい。
つまり今、この国の夢を全て壊そうとしているということは…夢の内容全てをユキサが受け持つこととなる。
周りの光が強くなる。
徐々に薄れていくルーイが、ぽつりと言葉を漏らした。