第12章 第十一話 夢現の大地
「うーん…やっぱり効かないねぇ」
パッと顎から手を離すと、ユキサが力なく俯いた。
小さな声が聞こえる。
「なぜ、私を殺さないの?」
あなたは全ての自由を望んでる。
自由にならない私は必要無いはずだ。
その言葉に、ルーイがくすりと笑った。
「一応、ノア様から君の事は殺すなと言われているからね。だけど…」
ルーイがにやりと笑った。
「それは命の話で、心の話ではないんだよねぇ」
「………」
「ねぇ、自由になれない心は辛くない?」
あの3人の望みがなんなのか、分かってる?
問われてユキサが小さく震えた。
そんなの分かってる、言われなくとも。
彩音も不二も神田も。
『私』じゃない私を見ていた。
彩音が不二に好きだと言えないのも。
不二が彩音を一番にできないのも。
神田があの人の影を見てしまうのも。
『私』がいるから。
『私』は一体、何者なんだろう…。
「つまり3人を縛ってる私に消えろと言っているわけね」
「そうだね。それで3人が幸せになるのだから」
ユキサは目を伏せた。
「そうね、そうなのかもしれない」
「あ、やっと僕の言う事を聞く気になった?」
これ以上の拷問はどうしようかと思ってたんだ、とケラケラ笑うルーイ。
そんなルーイを見ながら、でも…とユキサが続いた。
「それは、少なくとも今じゃない」
「どういう事?」