第12章 第十一話 夢現の大地
「友人夫婦と旅行に来てたんです」
「そうだったのね。さっき一緒に来ていた子?」
はい、と頷くと女がちらりと彩音たちの方を向いた。
「若いっていいわね、キラキラしてるわ。私たちも数十年前ならねぇ…」
「お前はいつまでも綺麗だよ」
「ま、あなたったら!」
「素敵なご夫婦じゃないですか」
でも…と続けたユキサ。
「…どこの国でも、ずっと化け物と戦いが続いてますよね?私たちも何度か見かけて…旅行もそろそろ終わろうかと思っていて…」
ユキサの言葉に、女が化け物?と首を傾げる。
知ってる?と夫である男へ声をかけるが、男も首を振った。
神田が目を細める。
「知らないですか?とてもおぞましい姿をしていて、人間をたくさん殺しているんです。…AKUMAと呼ばれているのですが」
「少なくとも、そんな恐ろしい化け物は知らないわ。この国でそんな化け物がいるとも聞いた事がないわ」
と、女が他の人に声をかけられ、夫婦はそれじゃあと去っていった。
去っていく夫婦を見ながら、ユキサは考え込む。
「やっぱりこの町には…国にはAKUMAが出ていないみたいだね」
何も反応がない神田にユキサが名前を呼ぶと、なんでもないと素っ気なく返された。
一方、離れた所で彩音と不二も、他の人物から話を聞いていた。
だが反応は皆同じで、そんな化け物はいないという。
「どうしてだろう…AKUMAは今世界中で問題にもなっているのに…」
「それに、この感じだと他国に支配されている感じでもない」
だが話を聞いた所で何も進展がなかった。
とりあえずユキサたちと合流しようと言った所で、ざわざわと周囲が騒がしくなる。
「え?なに?」
「…どうやら、本命の登場のようだ」
視線を向けるとホールの階段を1人の男、この国の国王が降りてきた。
隣に息子、つまり王子らしき男もいる。
「今宵も我が城のパーティへ、よくぞ来てくれた!」